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2014.11.30 Sunday

沈みゆく螺旋階段

 前回のブログ更新から、またもや1年以上の期間が過ぎてしまった。あれよあれよという間に、我が娘は2歳の誕生日を迎え、凄まじいペースで、言葉や自我を形成していく。娘の、1日ごとに豊かになっていく語彙や能力を目の当たりにし、それに対して、今日の自分は、昨日の自分と比べてどれだけの事を習得し、前進できたのであろうか。この問いと真剣に向かい合うという事は、私にとって、なかなかに厳しい戒めとなる。
 現在私は31歳。この歳の成人男性に対して、若いとか若くないとか、そんな話は至って相対的な話なので、割愛させていただくが、細胞レベルの話で言えば、着実に身体能力にしても脳の記憶能力にしても、衰えていく方向にベクトルは傾きつつあるのは疑いようの無い事実だと思う。根本的な記憶力は低下し、太りやすい体質へと移行し、肌のシワも増えていき、疲れを感じやすい体になっていく。日を追うということは、1日あたりにできる仕事の量と質が悪化するということを意味すると同時に、残りの生涯、仕事をできる日数、時間が減るという事を意味する。ハードウェアの面だけで見れば、小林鈴勘の価値は、日ごとに下がる一方だ。この事実に直面した私が出来ることと言えば、ハードウェアの老朽化や故障を最小限にとどめる為の努力と、ソフトウェアの向上くらいではないだろうか。
 この、ハードウェアの維持、向上とは、私にとって、具体的にはどのようなことかというと、まず、健康である状態を維持する、ということに尽きる。音楽的な話であれば、今出せる尺八の音量と音質(本人としては本当にまだまだだと思っているが)、これを維持、もしくは向上させ続けるということは、健康な体を無くして実現はまず不可能だと言っても過言ではないと思う。
 健康な体を維持するということは、具体的には、食生活に気を配ること、適度な運動をすること、十分な睡眠をとること、ストレスを感じにくい環境に身をおくこと(逆に、幸福を多く感じられる環境を積極的に構築していくこと)に尽きる。黙って何も考えず流されるままに生きていくと、私の場合は、どんどん健康な体から遠ざかってしまいがちだ。意識的に、このような、健康に良い環境に身をおくよう努力し続けることは、私にとって大切な使命のひとつだ。突如病気になって、ステージにあがれないという事態が起きてしまったらそれは仕方ないが、私生活の中で、病気になる可能性を0.001%づつでも、日々下げる為の努力をし続ける事は、ミュージシャンにとって重要な仕事のひとつに他ならないと思う。逆に、酒の飲み過ぎで翌日の仕事に影響する、なんていう事態は、演奏家としての倫理観から言えば、救いようの無い、最低で最悪な愚行のひとつと言わざるをえないのかもしれない。(と言う自分も、全くそんな事はない、と言い切れるほどに模範的な振る舞いをし続けてきたとは言い切れない。とにかく、過去の失敗や経験を、最大限の効率で今後の糧とできるように心がけている、としか言いようがない…。)
 ちなみに、ストレス云々の話は、「NK細胞」という細胞の話が元になっているので、疑問、もしくは興味を持った方は「NK細胞」を検索していただけたらと思う。おおまかにいうと、人体にはNK細胞という、壊れた細胞を修復する細胞が50億個程備わっているらしいが、笑うことでNK細胞は活性化するのに対し、ストレスを感じたりすると鈍化する、という話に基づいている。
 演奏家としての価値を基準に考えた場合、日に日に劣っていく傾向にある体力を何とか維持できるよう努力をし続けることと、あとは、その体力の低下を圧倒し、またソフトウェアの性能を向上させうるだけの鍛錬、すなわち練習をし続けることが、本質的価値の向上に繋がると信じている。小林鈴勘の価値を維持、もしくは向上をさせ続けるということは、下がり続けるハードウェアの価値を圧倒する程のソフトウェアの向上の為の努力、そして、ハードウェアの価値が下がるのを極力遅らせる為のメンテナンス作業に尽きるということである。私の人生は、この、本当にゴールという存在があるのかもよく分からない、そして加速度的に速度を早めながら海の底へ沈みゆく螺旋階段を必死に駆け登り続ける作業に没頭して終わりそうだ。この光景を想像すると、一見絶え間無く襲って来る恐怖から逃げ続ける悲惨な地獄絵図が思い浮かぶかもしれないが、実は、私自身としては、このような人生が楽しく、幸せで仕方がないのだ。



 
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